コンタクト・インプロビゼーションの「合意の憲章」
- connect CI
- 6月22日
- 読了時間: 4分
自分自身でも何か、コンタクト・インプロビゼーション(CI)について文章化してみたいな……と考えていたところ、Martin Keogh(マーティン・キーヨ)による Contact Improvisation Charter of Consent(コンタクト・インプロビゼーションの「合意の憲章」)に出会いました。
この文章を読んで、あらためて「コンタクトのわ」のサイトにも、日本語訳を含めて掲載したいという気持ちが湧いてきました。
マーティン・キーヨ(Martin Keogh)は、CIの初期から世界中で活動してきたダンサーであり、講師です。 30年以上にわたり、各地でワークショップを開催し、身体と身体の対話を深める場を生み出してきました。 また、コンタクトの中にある「詩」や「気づき」にも光を当て、やさしくて深い言葉を紡ぎ続けている人でもあります。
マーティンについてもっと知りたい方のために、この記事の末尾に彼のウェブサイトやInstagramのリンクを記載しています。
この「合意の憲章」は、Facebookで彼が投稿していたものです(以下、日本語訳):
これまでに多くの「ジャム・ルール(Jam Rules)」を読んできた中で、
もっと心に響くような、そしてコンタクト・インプロビゼーションの核心に近いものを書けないか、と考えました。
これはその試みの途中段階です。
ご意見や提案があれば、ぜひお聞かせください。
コンタクト・インプロビゼーションの「合意の憲章」
マーティン・キーヨ(Martin Keogh)による草案の試み
私たちは、すべての身体は主権をもつ存在であることを尊びます。 動きも、ふれあいも、つながりも、決して義務ではありません。
合意は、一度の「はい」で固定されるものではないと、私たちは知っています。 それは呼吸のように揺れ動き、変化し、踊りの途中で消えることもあります。 私たちは、それに耳を澄まし、敬意をもって応えます。
私たちは思い出します。 どれほど力強く、巧みで、魅力的であっても、 それが見えない「権利」を与えるわけではないということを。
すべての身体は、床と等しく出会うのです。
「ノー」と言うことも、ひとつのダンスであり、 立ち止まることも、ひとつの対話です。 離れることは失敗ではなく、むしろ信頼の行為であります。
私たちは、自らの過ちを認めます。 サインを見落とし、動きが早すぎ、ふれあいを誤解することもあるでしょう。 それでも私たちは、とどまります。 修復し、軌道を修正し、学び合うために。
怪我が起きることもある―そのことを、私たちは知っています。 リスクを美化することはしません。 私たちは、気づき・配慮・選択に根ざします。
身体は、さまざまな歴史を纏って現れます。 痛みの歴史。癒しの歴史。 私たちは、やさしく足を運び、敬意をもって動きます。
合意は、私たちがどのように着地するかに宿り、 コミュニティがどのように受けとめるかに現れ、 そして私たちが他者のために床を支える姿勢にあらわれます。
「コンタクトはいつも安全である」という幻想を、私たちは手放します。 「コンタクトはいつもつながりを生む」という幻想もまた、手放します。
私たちは、完全ではないけれど続いていく注意深さによって、安全を築いていくことを選びます。
私たちは、明るさと影が絡み合うような気づきを抱きながら踊ります。
そしてもう一度—— 感覚に立ち返り、ダンスに立ち返ります。
Original English text by Martin Keogh:
Contact Improvisation Charter of Consent
We honor that every body is sovereign.
No movement, no touch, no connection is owed.
We know that consent is not a one-time yes.
It breathes. It shifts. It can vanish mid-dance.
And we listen for it, with reverence.
We remember that strength, skill, and charisma
do not grant invisible authority.
Every body meets the floor equally.
We recognize that saying no is a form of dance.
Stopping is a form of communication.
Disengagement is not failure, it is an act of trust.
We admit that we will make mistakes.
Miss a signal. Move too fast. Misread a touch.
And we will stay,
to repair, to recalibrate, to learn.
We know that injuries can happen,
We do not romanticize risk.
We ground in awareness, care, and choice.
We acknowledge that bodies come wrapped in histories.
Histories of hurt. Histories of healing.
We tread lightly. We move with respect.
Consent is held in how we land,
in how the community catches us,
and how we, in turn, hold the floor for others.
We cast off the illusion that Contact is always safe.
We cast off the illusion that Contact is always connection.
We choose to build safety through ongoing, imperfect attention.
We dance with an entwined awareness,
the luminous and the shadowed. Once again
returning to sensation, returning to the dance.
〜 おわりに 〜
この文章はまだ「途中段階(Work in progress)」とのことですが、すでにたくさんの方からコメントやフィードバックが寄せられているようです。こうして言葉を共有し合える、CIコミュニティのこういうところが、とても好きです。
次回のCIジャムで、この「合意の憲章」を読んでみるのを楽しみにしています。
それが、自分やまわりのダンスにどのような影響をもたらすのか。もし何かが変わるとしたら、それはどんなふうに現れるのか——そんなことを思いながら、今は静かに心を寄せています。
ありがとう、マーティン。
Martin Keogh(マーティン・キーヨ)
IG;contact_improvisation_dancer 最近CIに関するReelを精力的に更新されています。
cover photo: SANSAI inc., Koki Sudo
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